2015年5月17日日曜日

ビオトープに集まったアカハライモリ

 ビオトープ(biotope)は、人工的に造った池など、野生の生きものたちがくらすことができる小さな自然のことを言います。ビオトープは、大道小学校のトンボ池が有名ですが、自分の家にもビオトープを作りたいと思って20年くらい前にプラスチックのケースを買ってきて庭に置きました。家人からは、蚊が増えると顰蹙を買いましたが、水草を入れておいて放っておいたらこのように小さな自然ができました。


長い間、放ったらかしにしてビオトープの存在自体も忘れた頃、雨が降ったあとに庭に出てみたら、イモリが歩いていました。ネットで調べるとアカハライモリという種類であることが分かりました。なんでこんな所にイモリがいるのか不思議でした。近くを調 べてみると、何年も前にビオトープを作るために置いていたプラスチックのケースの中にイモリが重なるように集まっていることがわかりました。これには驚きました。

イモリは、冬の間は、このケースから姿を消していて、春になるとここに集まってきます。ある時、近くの石をどけてみましたら、2匹のイモリが寄り添うように隠れていました。たぶん、カップルだと思います。とんだ無粋なことをやってしまいました。寒い冬の間は、石の下や土に中にもぐってじっとしているのです。

侍従会の佐野さんにお聞きすると、このイモリは、金沢区でも珍しい種類のものだということでした。近くには古い井戸があります。水道がないころは、この井戸を飲料水として使っていました。イモリは、井戸を守るということから井守とも書きます。昔から井戸を守りながらここに棲んでいたイモリがビオトープに集まってきたのでしょう。これからも、このイモリが棲める環境を大切に保っていきたいと思います。

2010年3月9日火曜日

ホトケドジョウLefua echigonia(ドジョウ科)[漢字]:仏泥鰌









ホトケドジョウLefua echigonia(ドジョウ科)[漢字]:仏泥鰌
[神奈川県]
絶滅危惧ⅠB類
[侍従川においてのランク]
☆☆☆☆☆
[国内分布]
秋田県と岩手県から兵庫県まで
[体長・形態]
体長約5cm。体色は地域差や個体差が大きい。体型は小型で円筒形である。4対8本のひげがあるのが特徴。茶褐色や赤褐色で体側には黒点がある。
[生息地と生態]
流れの緩やかな谷戸や源流域、湧水のある水路、時には湿地や水田にも生息する。雑食性で水生昆虫などの小動物を捕食している。1年で成熟し春に水草に産卵する。
[侍従川においての分布と現状]
横浜市金沢区においてホトケドジョウの産地は二か所が知られており、そのうちの一つが侍従川である。侍従川ではかつて本流と支流の二か所で生息が確認されていた。しかし水路の整備により本流では絶滅し、今では支流である大道渓谷の一部で細々と生息しているに過ぎない。生息地では個体数は多く、3月から4月頃にかけて産卵を始め、6月には多くの稚魚がみられるが、不安定な環境であるため今後も保全を続けていく必要がある。
[トピック]
 よく見るとひげが生えていて愛きょうのある可愛い顔をした魚だと思います。こんな顔ですから地方ではオカメドジョウやダルマドジョウと呼ぶ地域もあるそうです。ホトケドジョウは飼育しても面白く、慣れると手から餌付けできるようにもなります。是非機会があれば飼ってみてください。
                              (記:佐野真吾)

マルタンヤンマ Anaciaeschna martini (Selys)









マルタンヤンマ♂/♀/幼虫(撮影:佐野)
マルタンヤンマ Anaciaeschna martini (Selys)
[漢字]:マルタン蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆
[国内分布]
 茨城・長野・新潟県以西の本州・四国・九州および奄美大島以北の南西諸島
[体長・形態]
 約7.5cm。羽化直後は黄色だが、成熟後、♂はトルコ石のような鮮やかな青色になり、♀は濃い黄色に変化する。翅の色が他のヤンマと比較して茶色い。
[生息地と生態]
 平地から低山地の水生植物が繁茂する池や湿地、川の淀みなどの水辺を好む。成熟した♂は、早朝と黄昏時に、生息地近くの谷筋を数10kmものスピードでパトロールすることが知られている。老熟すると生息地となる水田や湿地の上空をゆっくり飛翔するようになる。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では、水生植物が豊富な朝比奈小学校ビオトープや大道小学校ビオトープで産卵や幼虫が確認されている。なお、しばしば侍従川本流やコンクリート池で幼虫が発見されることがあるが、いずれも止水状態の植物が繁茂した環境である。侍従川流域ではそれほど多くない種である。
[トピック]
 マルタンヤンマの♂こそ、トンボ好きなら必ず憧れ、まず最初に突き当たる壁でしょう。この鮮やかで美しすぎるヤンマは早朝と夕方にしか現れません。また、凄まじいスピードで突き抜けるようにして飛ぶので捕まえるのも難しいのです。とあるの夏、私は友達を連れてマルタンヤンマを採りに出かけました。暗くなり遠近感がつかめなくなる時間帯に飛んでくるマルタンヤンマをネットインさせるのはまさに至難です。二人は何回も網をふっては空振りさせられました。そして友達はいいました。「バッティングセンターで120キロの球打つより難しいよ…。」

ヤブヤンマ Polycanthagyna melanictera (Selys)(ヤンマ科)









ヤブヤンマ♀/♂/幼虫(撮影:佐野)
ヤブヤンマ Polycanthagyna melanictera (Selys)(ヤンマ科)
[漢字]:藪蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆
[国内分布]
 本州・九州・四国・沖縄本島にかけて分布
[体長・形態]
 約8cm。大型のヤンマである。羽化直後は♂♀ともに黄色である。成熟すると黄緑色になる。♂は複眼と腹部の付け根が鮮やかな青色になる。
[生息地と生態]
 丘陵地や低山地の閉ざされた木陰の小さな池や水溜りを好む。5月下旬から9月中旬に出現するが、6月から8月が最盛期である。黄昏時の上空を群れて飛ぶことが多い。移動能力はかなり高いといわれている。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では、各地の止水域で確認されている。特に、大道中学校の裏山に点在する水溜りには幼虫が多産しており、6月から8月にかけて毎年成虫が黄昏飛翔をする様子が観察できる。また、大道小学校のコンクリート池では産卵する様子がしばしば観察される。侍従川流域では健在な種である。
[トピック]
 学生部隊長の山田さんが初めて飼育して羽化させたのがこのヤブヤンマだそうです。ヤブヤンマの幼虫は比較的おとなしく、あまり共食いもしません。また、終齢幼虫まで成長するとかなり大きくなり、羽化の成功率も低くありません。飼育・観察にはピッタリのトンボだと思います。皆さんも是非ヤブヤンマの幼虫を飼育してみてはいかがでしょうか?

ミルンヤンマ Planaeschna milnei (Selys)(ヤンマ科)









ミルンヤンマ♂/♀/幼虫 (撮影:佐野)
ミルンヤンマ Planaeschna milnei (Selys)(ヤンマ科)
[漢字]:ミルン蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約7cm。コシボソヤンマに似るが、ひとまわり小さく、腰のくびれもコシボソヤンマほどではない。幼虫は頭部の後ろに刺がないことからコシボソヤンマと識別できる。
[生息地と生態]
丘陵地から山地の森林に面した源流域に多い。6月下旬から羽化が始まり、11月までみられる。9月から10月が最盛期である。黄昏時に飛翔し、人間の視野ではほとんど見えないくらいの暗さまで飛び続ける。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川では本流の源流域と支流である蛍谷戸・大道渓谷の3ヶ所で幼虫が確認されているが、近年は減少傾向にある。特に蛍谷戸・大道渓谷では確認されない年もあり心配されている。本流の源流域でも2008年の調査では成虫♂2頭しか確認されなかった。
[トピック]
 2008年、私は地元でひっそりとミルンヤンマの調査をしていました。夕方網を持って出かけて行き、真っ暗になるまで網を振りまわします。もう日が落ちかけた源流域の暗い川辺で待っていると、僅かに開けて光が射し込む場所にミルンヤンマは上から落ちてくるように現れます。もう暗くて何かがジグザグと小刻みに飛んでいるようにしか見えない中、遠近感と間合いをつかんで網をふります。「カシャッ」と、トンボが網に入る音がした時、思わず一人でガッツポーズをしてしまいました。

コシボソヤンマ Boyeria maclachlani (Selys)(ヤンマ科)









コシボソヤンマ♂/♀(産卵)/幼虫(羽化殻)(撮影:佐野)
コシボソヤンマ Boyeria maclachlani (Selys)(ヤンマ科)
[漢字]:腰細蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約8cm。♂♀ともに腹部第3節が著しくくびれる。基本的に黄色い条紋があり♂は成熟すると一部緑色になる。♀は非常に地味である。
[生息地と生態]
 平地や丘陵地の小川(中流、上流、源流域までみられる)。7月の終わり頃から8月にかけて出現し黄昏時に飛翔する。若い個体は早朝と夕方に川の流れの上に縄張りをつくってパトロールするが、9月から10月、老熟した個体も同じような生活をみせる。秋になると日中も活動する。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川では本流の上流および源流域と支流である大道渓谷で幼虫が確認されている。また2008年7月のハグロトンボ調査の時には、上流域でコシボソヤンマの羽化殻が大量に確認された。生息地では個体数も多く今のところは健在である。
[トピック]
 コシボソヤンマの幼虫は手に取ると反り返って死んだフリ(?)をします。侍従会の子どもたちは皆それを見てイナバウワーと言います。昆虫に興味のない人でもすぐに覚えられるコシボソヤンマの幼虫でした。

クロイトトンボ Paracercion calamorum calamorum (Ris)(イトトンボ科)











クロイトトンボ♂/幼虫(撮影:佐野)
クロイトトンボ Paracercion calamorum calamorum (Ris)(イトトンボ科)
[漢字]:黒糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約3cm。♂は成熟すると青白粉を吹くが全体的に黒味が強い。♀は胸部が青い個体と緑の個体の2型がある。
[生息地と生態]
 平地から低山地の池沼、湿地、水田、小川など、浮葉植物の茂る広範囲の止水域に生息する。成熟した♂は浮葉植物の葉などにとまって縄張りをつくり、水面をすれすれを飛び回る。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では1990年代に大道小学校ビオトープで見られたが近年は確認されていない。減少した原因はアメリカザリガニの放流だと考えられる。侍従川流域はもともと止水域の少ない地域であるため大道小学校ビオトープはイトトンボ類にとって重要な生息地である。
[トピック]
 クロイトトンボは個人的にすごく好きなイトトンボです。どこか品があり、観察していると首をかしげたりする仕草もみられてとても可愛いと思います。横浜では近年減少しているそうです。
(記:佐野真吾)