2010年3月9日火曜日

ホトケドジョウLefua echigonia(ドジョウ科)[漢字]:仏泥鰌









ホトケドジョウLefua echigonia(ドジョウ科)[漢字]:仏泥鰌
[神奈川県]
絶滅危惧ⅠB類
[侍従川においてのランク]
☆☆☆☆☆
[国内分布]
秋田県と岩手県から兵庫県まで
[体長・形態]
体長約5cm。体色は地域差や個体差が大きい。体型は小型で円筒形である。4対8本のひげがあるのが特徴。茶褐色や赤褐色で体側には黒点がある。
[生息地と生態]
流れの緩やかな谷戸や源流域、湧水のある水路、時には湿地や水田にも生息する。雑食性で水生昆虫などの小動物を捕食している。1年で成熟し春に水草に産卵する。
[侍従川においての分布と現状]
横浜市金沢区においてホトケドジョウの産地は二か所が知られており、そのうちの一つが侍従川である。侍従川ではかつて本流と支流の二か所で生息が確認されていた。しかし水路の整備により本流では絶滅し、今では支流である大道渓谷の一部で細々と生息しているに過ぎない。生息地では個体数は多く、3月から4月頃にかけて産卵を始め、6月には多くの稚魚がみられるが、不安定な環境であるため今後も保全を続けていく必要がある。
[トピック]
 よく見るとひげが生えていて愛きょうのある可愛い顔をした魚だと思います。こんな顔ですから地方ではオカメドジョウやダルマドジョウと呼ぶ地域もあるそうです。ホトケドジョウは飼育しても面白く、慣れると手から餌付けできるようにもなります。是非機会があれば飼ってみてください。
                              (記:佐野真吾)

マルタンヤンマ Anaciaeschna martini (Selys)









マルタンヤンマ♂/♀/幼虫(撮影:佐野)
マルタンヤンマ Anaciaeschna martini (Selys)
[漢字]:マルタン蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆
[国内分布]
 茨城・長野・新潟県以西の本州・四国・九州および奄美大島以北の南西諸島
[体長・形態]
 約7.5cm。羽化直後は黄色だが、成熟後、♂はトルコ石のような鮮やかな青色になり、♀は濃い黄色に変化する。翅の色が他のヤンマと比較して茶色い。
[生息地と生態]
 平地から低山地の水生植物が繁茂する池や湿地、川の淀みなどの水辺を好む。成熟した♂は、早朝と黄昏時に、生息地近くの谷筋を数10kmものスピードでパトロールすることが知られている。老熟すると生息地となる水田や湿地の上空をゆっくり飛翔するようになる。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では、水生植物が豊富な朝比奈小学校ビオトープや大道小学校ビオトープで産卵や幼虫が確認されている。なお、しばしば侍従川本流やコンクリート池で幼虫が発見されることがあるが、いずれも止水状態の植物が繁茂した環境である。侍従川流域ではそれほど多くない種である。
[トピック]
 マルタンヤンマの♂こそ、トンボ好きなら必ず憧れ、まず最初に突き当たる壁でしょう。この鮮やかで美しすぎるヤンマは早朝と夕方にしか現れません。また、凄まじいスピードで突き抜けるようにして飛ぶので捕まえるのも難しいのです。とあるの夏、私は友達を連れてマルタンヤンマを採りに出かけました。暗くなり遠近感がつかめなくなる時間帯に飛んでくるマルタンヤンマをネットインさせるのはまさに至難です。二人は何回も網をふっては空振りさせられました。そして友達はいいました。「バッティングセンターで120キロの球打つより難しいよ…。」

ヤブヤンマ Polycanthagyna melanictera (Selys)(ヤンマ科)









ヤブヤンマ♀/♂/幼虫(撮影:佐野)
ヤブヤンマ Polycanthagyna melanictera (Selys)(ヤンマ科)
[漢字]:藪蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆
[国内分布]
 本州・九州・四国・沖縄本島にかけて分布
[体長・形態]
 約8cm。大型のヤンマである。羽化直後は♂♀ともに黄色である。成熟すると黄緑色になる。♂は複眼と腹部の付け根が鮮やかな青色になる。
[生息地と生態]
 丘陵地や低山地の閉ざされた木陰の小さな池や水溜りを好む。5月下旬から9月中旬に出現するが、6月から8月が最盛期である。黄昏時の上空を群れて飛ぶことが多い。移動能力はかなり高いといわれている。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では、各地の止水域で確認されている。特に、大道中学校の裏山に点在する水溜りには幼虫が多産しており、6月から8月にかけて毎年成虫が黄昏飛翔をする様子が観察できる。また、大道小学校のコンクリート池では産卵する様子がしばしば観察される。侍従川流域では健在な種である。
[トピック]
 学生部隊長の山田さんが初めて飼育して羽化させたのがこのヤブヤンマだそうです。ヤブヤンマの幼虫は比較的おとなしく、あまり共食いもしません。また、終齢幼虫まで成長するとかなり大きくなり、羽化の成功率も低くありません。飼育・観察にはピッタリのトンボだと思います。皆さんも是非ヤブヤンマの幼虫を飼育してみてはいかがでしょうか?

ミルンヤンマ Planaeschna milnei (Selys)(ヤンマ科)









ミルンヤンマ♂/♀/幼虫 (撮影:佐野)
ミルンヤンマ Planaeschna milnei (Selys)(ヤンマ科)
[漢字]:ミルン蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約7cm。コシボソヤンマに似るが、ひとまわり小さく、腰のくびれもコシボソヤンマほどではない。幼虫は頭部の後ろに刺がないことからコシボソヤンマと識別できる。
[生息地と生態]
丘陵地から山地の森林に面した源流域に多い。6月下旬から羽化が始まり、11月までみられる。9月から10月が最盛期である。黄昏時に飛翔し、人間の視野ではほとんど見えないくらいの暗さまで飛び続ける。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川では本流の源流域と支流である蛍谷戸・大道渓谷の3ヶ所で幼虫が確認されているが、近年は減少傾向にある。特に蛍谷戸・大道渓谷では確認されない年もあり心配されている。本流の源流域でも2008年の調査では成虫♂2頭しか確認されなかった。
[トピック]
 2008年、私は地元でひっそりとミルンヤンマの調査をしていました。夕方網を持って出かけて行き、真っ暗になるまで網を振りまわします。もう日が落ちかけた源流域の暗い川辺で待っていると、僅かに開けて光が射し込む場所にミルンヤンマは上から落ちてくるように現れます。もう暗くて何かがジグザグと小刻みに飛んでいるようにしか見えない中、遠近感と間合いをつかんで網をふります。「カシャッ」と、トンボが網に入る音がした時、思わず一人でガッツポーズをしてしまいました。

コシボソヤンマ Boyeria maclachlani (Selys)(ヤンマ科)









コシボソヤンマ♂/♀(産卵)/幼虫(羽化殻)(撮影:佐野)
コシボソヤンマ Boyeria maclachlani (Selys)(ヤンマ科)
[漢字]:腰細蜻蜒
[神奈川県レッドデータブック2006]
要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約8cm。♂♀ともに腹部第3節が著しくくびれる。基本的に黄色い条紋があり♂は成熟すると一部緑色になる。♀は非常に地味である。
[生息地と生態]
 平地や丘陵地の小川(中流、上流、源流域までみられる)。7月の終わり頃から8月にかけて出現し黄昏時に飛翔する。若い個体は早朝と夕方に川の流れの上に縄張りをつくってパトロールするが、9月から10月、老熟した個体も同じような生活をみせる。秋になると日中も活動する。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川では本流の上流および源流域と支流である大道渓谷で幼虫が確認されている。また2008年7月のハグロトンボ調査の時には、上流域でコシボソヤンマの羽化殻が大量に確認された。生息地では個体数も多く今のところは健在である。
[トピック]
 コシボソヤンマの幼虫は手に取ると反り返って死んだフリ(?)をします。侍従会の子どもたちは皆それを見てイナバウワーと言います。昆虫に興味のない人でもすぐに覚えられるコシボソヤンマの幼虫でした。

クロイトトンボ Paracercion calamorum calamorum (Ris)(イトトンボ科)











クロイトトンボ♂/幼虫(撮影:佐野)
クロイトトンボ Paracercion calamorum calamorum (Ris)(イトトンボ科)
[漢字]:黒糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約3cm。♂は成熟すると青白粉を吹くが全体的に黒味が強い。♀は胸部が青い個体と緑の個体の2型がある。
[生息地と生態]
 平地から低山地の池沼、湿地、水田、小川など、浮葉植物の茂る広範囲の止水域に生息する。成熟した♂は浮葉植物の葉などにとまって縄張りをつくり、水面をすれすれを飛び回る。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では1990年代に大道小学校ビオトープで見られたが近年は確認されていない。減少した原因はアメリカザリガニの放流だと考えられる。侍従川流域はもともと止水域の少ない地域であるため大道小学校ビオトープはイトトンボ類にとって重要な生息地である。
[トピック]
 クロイトトンボは個人的にすごく好きなイトトンボです。どこか品があり、観察していると首をかしげたりする仕草もみられてとても可愛いと思います。横浜では近年減少しているそうです。
(記:佐野真吾)

アジアイトトンボ Ischnura asiatica Brauer(イトトンボ科)












アジアイトトンボ♂♀/幼虫(撮影:佐野)
アジアイトトンボ Ischnura asiatica Brauer(イトトンボ科)
[漢字]:亜細亜糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆☆
[国内分布]
 国内全域に分布
[体長・形態]
 約3cm。アオモンイトトンボに似るが♂は後ろから2節目が鮮やかな青色であること、♀では腹部第1節背面に黒色条があることで見分けられる。また、♀は成熟するとくすんだ緑色に変化する。
[生息地と生態]
 平地の池沼、湿地、水田、小川など広範囲の止水域に生息する。アオモンイトトンボに比べて内陸部に多い。非常に早い時期から現れるイトトンボで4月には羽化が始まる。水草や藻の生える池であれば人口池などでも見られるが、近年全国的に減少傾向にある。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域でも近年減少傾向にある。2000年以前までは大道小学校トンボ池で多くみられたが、近年はみられるイトトンボのほとんどがアオモンイトトンボで本種は稀である。減少した原因は不明である。2009年4月に侍従川本流で幼虫が発見されたがその後再確認されていない。
[トピック]
 アジアイトトンボの♀は、成熟前は赤い色をしています。子どもの頃私は赤いアジアイトトンボの♀をベニイトトンボだと思ってしました。しかし今までベニイトトンボだと思っていたトンボがアジアイトトンボの未成熟個体だと知った時は少し残念でした。そして私はその時初めて、トンボは成熟すると色が変わることを知ったのでした。

アオモンイトトンボ Ischnura senegalensis (Rambur)(イトトンボ科)









アオモンイトトンボ♂/♀/幼虫(撮影:佐野真吾)
アオモンイトトンボ Ischnura senegalensis (Rambur)(イトトンボ科)
[漢字]:青紋糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆
[国内分布]
 岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島
[体長・形態]
 約3cm。アジアイトトンボと似るが、♂は後ろから3節目が鮮やかな青色であること、♀では腹部第1節の背面に黒色条がないことで見分けられる。
[生息地と生態]
 平地の池沼、湿地、水田、小川など広範囲の止水域に生息する。アジアイトトンボに比べて内陸部には少なく海に近い地域に多い。他のイトトンボに比べ分散性も強いと考えられている。性格は非常に獰猛で、小さな昆虫や他のイトトンボを襲って捕食することもある。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では大道小学校ビオトープや大道中学校の人口池、侍従川本流の水草の多い淀みなどから発見されている。1990年代に比べると近年の方が見かける機会は多くなったように思われる。
[トピック]
 アオモンイトトンボは私の中では最もポピュラーなイトトンボです。イトトンボといえばアオモンイトトンボというようなイメージです。しかし、それは私の家が海の近くだからかもしれません。アオモンイトトンボは海の近くに多いそうです。南西諸島まで分布しているアオモンイトトンボですが、私が2008年に訪れた大東島でもたくさんみられて驚きました。小さな島は海に囲まれているからでしょうか。
[漢字]:青紋糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆
[国内分布]
 岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島
[体長・形態]
 約3cm。アジアイトトンボと似るが、♂は後ろから3節目が鮮やかな青色であること、♀では腹部第1節の背面に黒色条がないことで見分けられる。
[生息地と生態]
 平地の池沼、湿地、水田、小川など広範囲の止水域に生息する。アジアイトトンボに比べて内陸部には少なく海に近い地域に多い。他のイトトンボに比べ分散性も強いと考えられている。性格は非常に獰猛で、小さな昆虫や他のイトトンボを襲って捕食することもある。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では大道小学校ビオトープや大道中学校の人口池、侍従川本流の水草の多い淀みなどから発見されている。1990年代に比べると近年の方が見かける機会は多くなったように思われる。
[トピック]
 アオモンイトトンボは私の中では最もポピュラーなイトトンボです。イトトンボといえばアオモンイトトンボというようなイメージです。しかし、それは私の家が海の近くだからかもしれません。アオモンイトトンボは海の近くに多いそうです。南西諸島まで分布しているアオモンイトトンボですが、私が2008年に訪れた大東島でもたくさんみられて驚きました。小さな島は海に囲まれているからでしょうか。

ベニイトトンボCeriagrion nipponicum Asahina(イトトンボ科)

ベニイトトンボ(撮影:  )
ベニイトトンボCeriagrion nipponicum Asahina(イトトンボ科)
[漢字]:紅糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
 絶滅危惧ⅠA類
[侍従川においてのランク]
 絶滅
[国内分布]
 宮城県から鹿児島にかけて局地的に分布
[体長・形態]
 約3cm。♂は鮮やかな朱赤色をしており、そこから紅イトトンボの名前がついている。♀は橙褐色をしている。キイトトンボとは近種。
[生息地と生態]
 抽水植物や浮葉植物が豊富な池沼を好む。一般には移動能力は高くないと言われているが、県内では横浜市鶴見区や金沢区、鎌倉市などでたびたび確認される。自然発生したのかは不明。
[侍従川においての分布と現状]
 1990年代後半に大道小学校につくられたビオトープで繁殖した。原因は水草の移入によるものだと言われている。その後数年間は大道小学校トンボ池でみられたが、アメリカザリガニが放流されたことにより数を減らし、2000年にはすでにみられなくなっていた。
[トピック]
 最初は大道小学校の生徒がゲタ箱で見つけたそうです。そして当時大道小学校の教員でビオトープづくりを指導していた尾上伸一先生は大変驚きました。そしてベニイトトンボを見つけた少年は尾上先生に大変称えられました。彼は中学生になった後々、侍従会学生部の生き物とり主力メンバーとなるのです。

キイトトンボCeriagrion melanurum Selys(イトトンボ科)












キイトトンボ♂/♀(撮影:佐野)
キイトトンボCeriagrion melanurum Selys(イトトンボ科)
[漢字]:黄糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
 絶滅危惧ⅠB類
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆☆☆
[国内分布]
 本州・四国・九州
[体長・形態]
 約3cm。♂は鮮やかな黄色、♀は緑に近い体色をしている。比較的太身のイトトンボで他種との判別は容易である。
[生息地と生態]
 5月から10月くらいまでみられるが、7月から8月に多く発生する。水生植物が豊富な休耕田や水田、池を好む。移動能力は比較的高いといわれており、単発的に発生することがしばしばある。県内では珍しい種である。
[侍従川においての分布と現状]
 1990年代に大道小学校に作られたビオトープで目撃されたが、その後はみられなくなった。しかし、2009年8月に1♂が再発見された。目に入りやすい本種が、小さなビオトープで10年以上も確認されなかったことは考えにくい。今回採集された個体は当地で生き残っていたものではなく、他地域から飛来した個体である可能性が考えられる。その後の再発見はされていない。
[トピック]
 体が黄色く、腹部の先の上の部分が黒いというなんともオシャレなイトトンボだと思います。太身な体系をしているため、実物は写真でみるよりずっと大きくみえます。また、近くに寄ってもあまり逃げないので、写真撮影や絵を描いたりするにはもってこいのトンボです。










ホソミオツネントンボ(撮影:佐野)
ホソミオツネントンボ Indolestes peregrinus (Ris)(アオイトトンボ科)
[漢字]:細身越年蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆☆☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約4cm。未熟な個体は褐色だが、気温が上がり成熟しはじめると青色に変化する。近種のオツネントンボとは翅を閉じた時の縁紋が重ならない点で見分けられる。本種は縁紋がすべて重なる。
[生息地と生態]
 植物が繁茂する池沼や湿地、水田などに生息する。成虫で越冬することで知られている。3月ぐらいから暖かい日は越冬していた成虫が飛び回り始める。そして4月から5月頃、気温が上昇しはじめると地味な褐色から美しい青色に変わる。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では1995年、尾上氏によって撮影された記録が残っているが、近年は見つかっていない。かつては朝比奈町に生息していたようだ。2009年の春に調査したが発見できなかった。侍従川流域における本種の生存は危機的といえる。
[トピック]
 子どもの頃、「ホソミオツネントンボ」という名前の意味が分からず、どこで切ればいいのか分かりませんでした。「ホソ、ミオツネン、トンボ?」「ホソミオ、ツネン?」なんのこっちゃ??オツネンは漢字で「越年」と書きます。それを知った時はちょっぴり感動でした。細身で年を越すトンボなのですね。










オオアオイトトンボ(撮影:佐野真吾)
オオアオイトトンボLestes temporalis Selys(アオイトトンボ科)
[漢字]:大青糸蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
 健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆
[国内分布]
 北海道、本州、四国、九州
[体長・形態]
 約5cm。かなり大型なイトトンボである。♂は成熟してもアオイトトンボほど青粉は目立たない。♀は産卵管が非常に大きく他種との識別が容易である。
[生息地と生態]
 平地から低山地の森や林に面した池沼や湿地などの止水域に生息する。5月下旬から羽化が始まり、11月の下旬までみられる。未成熟のうちは水辺近辺の林内で過ごし、成熟すると水辺に現れる。特徴的なのは、他のアオイトトンボ属が主に午前中生殖行動をするのに対して、本種は午後を中心におこなう。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川流域では朝比奈小学校ビオトープ、大道小学校トンボ池、切通し入口などでみられる。侍従川流域は元々止水域が少ない地域だが、生息地における個体数に減少の傾向はみられないように思われる。10月頃が最盛期のようだ。
[トピック]
 私が通っていた朝比奈小学校ではビオトープができる前からオオアオイトトンボが住んでいました。私がまだ小学生だったある日の秋、友達がカワトンボを採ったと私に見せに来ました。まさか、秋にカワトンボがいるわけありません。友達が持ってきた虫籠をみるとカワトンボよりやや小さいトンボが入っていました。「おぉこれはでかいイトトンボだな!これちょうだい!」。友達からもらったイトトンボを家に帰って調べてみるとオオアオイトトンボでした。








アサヒナカワトンボ♂/交尾/幼虫 (撮影:佐野真吾)
アサヒナカワトンボMnais pruinosa Selys (カワトンボ科)
[漢字]:朝比奈河蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
 健在種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆
[国内分布]
茨城県・東京都・神奈川県・埼玉県・群馬県・新潟県以西の本州・四国・九州
[体長・形態]
 約6cm。♂は橙色翅型と透明翅型がある。また、橙色翅型、透明翅型の中でも様々な型があり、個体差の大きいトンボである。かつてカワトンボはオオカワトンボ・ヒガシカワトンボ・ニシカワトンボと分類されていたが、現在はニホンカワトンボ・アサヒナカワトンボと分類する。
[生息地と生態]
 平地の小川や源流部の清流に生息する。成虫は4月から6月に出現する。♂は個体差によって格差があり、縄張りをつくるさい橙色型が優先する。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川では本流である朝比奈の源流域の他、8か所の支流(六浦南、大道渓谷、朝比奈小学校、朝比奈切通し入口、常林寺裏、大滝の沢、蛍谷戸、若水)で分布が確認されている。各生息地では近年やや減少傾向にあるように思われる。
[トピック]
 房総半島の一部にシロバネカワトンボという幻のカワトンボがいるそうです。私たち侍従会学生部のメンバーは幻のカワトンボを見つけるべく房総半島の生息地に行ったことがありました。「見つけた!羽が白いぞ!」。興奮した私は侍従会創設メンバーの一人であり、トンボの専門家である梅田さんに見てもらいました。「これは泥バネだねぇ・・・」。羽に泥がついて白くなっただけの普通のカワトンボでした。

ハグロトンボCalopteryx atrata Selys(カワトンボ科)









ハグロトンボ♂/♀/幼虫 (撮影:佐野)

ハグロトンボCalopteryx atrata Selys(カワトンボ科)
[漢字]:羽黒蜻蛉
[神奈川県レッドデータブック2006]
 要注意種
[侍従川においてのランク]
 ☆☆
[国内分布]
北海道、本州、九州、種子島、屋久島など
[体長・形態]
 約6cm。♂は黒い翅に緑の光沢のある体をしている。近種のアオハダトンボとは♂には青藍色の光沢がないこと、♀には偽緑紋がないことなどで見分けられる。
[生息地と生態]
 水草の生えるゆるやかな流水に生息する。成熟するまでは水辺近くの薄暗い環境を好み、群れでいることが多い。成虫は5月下旬から11月にかけて出現するが、最盛期は7月下旬である。横浜では一時期絶滅したと思われたが、近年各地で再確認されている。
[侍従川においての分布と現状]
 侍従川では1970年代を最後に絶滅したと言われていたが、1995年に再発見され、それ以降しばしば発見されるようになった。2002年以降は毎年確認されるようになり2005年には幼虫も採集された。現在では上流域で普通にみられ、毎年カウント調査がイベント化されている。
[トピック]
 ハグロトンボは昔から親しまれているトンボでヒラヒラと優雅に飛ぶことから極楽トンボ、神様トンボなどと呼ばれた地域もあるようです。また、羽が黒いからお歯黒トンボと呼ばれていることが多く、昔の人に親しまれていたことが伺えます。1995年、侍従川でハグロトンボを再発見したのは私の同級生の妹で、この時のことは新聞にとりあげられるほどでした。